改訂3版 
 授業書読み物 1 
   
  石はどこでどうして生まれたのか」
  
  このお話は、授業書「結晶」のあとで読むもの  として作成したものです。
         
  
  石はどこでどうして生まれたのか
 
  〈結晶〉の勉強を終えて, 地球の岩や石もほとんど結晶でできていることを知りました。
  それでは、わたしたちがよく見る石ころは, どこでどんなふうにして生まれてきたのでし
ょうか。みなさんはどう思いますか。
 
 石ころの生まれを知るには, 地球の誕生物語から始めなければなりません。科学者の
研究によると,この地球は今から46億年前、太陽の誕生と同時に生まれました。 広い宇
宙に浮かんでいたガスや粒が,ある時,ゆっくりと,そして,だんだん速く渦を巻きはじめました。
やがて,その中心に高温の太陽ができたのです。と同時に,その太陽のまわりに,金星や
地球,火星などの惑星ができたのです。
 その広い宇宙に浮かんでいたガスには,酸素や水素,鉄,アルミニウム,ニッケル,マグネシ
ウム,ケイ素などの原子がすでにあったのです。ですから,地球や金星たちも,それらの原子
が集まってできたのです。
 できたての地球は,微(び)惑星(小さな星)たちの衝突(しょうとつ)をさかんに受けました。その
時の熱で,できたての地球は,どろどろにとけたまっ赤なマグマで,おおいつくされていました。
 やがて,微(び)惑星たちの衝突も少なくなり,地球の温度も冷え,浮かんでいた水分子は激
(はげ)しい雨となって,地球に降り始めました。地球に海が誕生したのです。この時,地表はか
たい岩石にかわりました。そのときにできた岩石が玄武岩(げんぶがん)です。玄武岩には,比重
(ひじゅう)(1p3あたりの重さ)の重い鉄やマグネシウムがたくさん含まれています。
 この玄武岩でおおわれた地球も,やがて, 隕石(いんせき)の衝突などであちこちでひび
われして,場所によっては沈み込むところも現れました。約40億年前は,ものすごい隕石
の衝突があったことがわかっています。
 その沈み込んだところの玄武岩は,地球の中の熱でふたたびとけて吹き出し,地表の水
などとまざりました。そのとき,比較的比重の軽い原子が地表に集まるようになりました。
 このとき地表で固まった岩石が花崗岩(かこうがん)です。花崗岩には,比重の軽い酸素
やケイ素という原子が多く含まれています。
 この花崗岩の重さは,玄武岩の重さに比べて少し軽いので,やがて花崗岩は玄武岩の
上に浮くような形で集まり出したのです。そして,所々に大きな花崗岩の固まりをつくりま
した。それが,今の大陸です。              
 中国大陸や北アメリカ大陸などに,大きな花崗岩が広がっているのは,そのためです。日
本列島の中心部に花崗岩が多い理由も,同じです。
 現在, 科学者は, 地球の中は次の図のようになっていると考えています。
       
 そして「りんごの皮のようなうすい玄武岩の帯おび)が,地球の表面をおおっている。ところどころで花
崗岩が大陸としてその上にのっている。この玄武岩の帯はいくつかに分かれている。そして,大陸の近
くでは,海からの帯が地下に沈み込んでいる。そしてそこでは,つねに下方向に力が加えられている。そこ
で力をうけた岩石は,部分的にとけてマグマとなり,やがて地上に吹き出して火山をつくる。」
と考えています。
 上の図の@の場所の火山から出る溶岩はおもに玄武岩です。この玄武岩は急にマグマが冷えてで
きるので、鉱物の結晶は小さくて見えにくいのがふつうです。ふつうは、まっ黒なち密
(みつ)な岩石で
す。

  それにたいして、大陸にある花崗岩は,ゆっくりと冷えてできました。そこで,ふつう花崗岩の
結晶の粒は大きく,一つ一つの結晶が肉眼でもよく見えます。
また, 花崗岩は,玄武岩よりかなり白っぽい石です。
 今までの話から,地球上の岩石のもとは,大きく分けると玄武岩(げんぶがん)と花崗岩
(かこうがん)です。
 やがて、その後の地球の変化で、ほかの岩石もできてきました。
 前ページ図のAの場所でできた火山から安山岩(あんざんがん)という岩石ができました。
また,一度こわれた岩石が,小石や砂や泥(どろ)にになって海底にたまり,しだいに固くなっ
てできた岩石があります。れき岩,砂岩(さがん) ,泥岩(でいがん)などと呼ばれているもので
す。そのほか,火山の噴出物(ふんしゅつぶつ)が積もってできた岩石もあります。溶岩(ようがん),
ぎょう灰(かい)岩などと呼ばれる岩石です。
 また,海水中のカルシウムやケイ素などをとりいれて生きている海の生物がいます。そ
れらの生物のの死骸(しがい)が元になってできた石もあります。石灰岩(せっかいがん)
やチャートとよばれる石です。
 そのほか、一度できた岩石が、その後の地球の熱や強い圧力で、結晶を作り直した
岩もあります。大理石(だいりせき)、片麻岩(へんまがん)、結晶片岩(へんがん)などと呼ばれている
岩石です。
 
 姿形はどうであれ,どの岩石も,みんな,地下の原子が組み合わさってできているのです。
 地球上にまず玄武岩(げんぶがん)が現れ、やがて花崗岩(かこうがん)ができ,火山の岩石や海
底に積(つ)もってできた岩石ができました。さらに,生物が作った岩石もできました。その
後の地球の熱や圧力で変化した岩石もできました。こんなふうにして,地球上に,いろいろ
な岩石が現れるようになったのです。
 しかし、いずれも、もともと地球の中にあった原子が組み合わさってできているのです。
 どうですか、足もとに転(ころ)がっている石ころの中に〈結晶〉が見えてきたでしょうか。
                                            (2003,3,西村寿雄) 

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